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アナログ世代のトラブル傾向 Mercedes-Benz & BMW

アナログ世代のドイツ車はデジタル世代のように高度な電子制御を搭載していないのが特徴。そのためデジタル世代ほど電子ユニットやセンサーが壊れるというケースは少ない。機械的なトラブルが多い傾向にあるのがアナログ世代なのである。

 本企画では、CANデータバス搭載以前のモデルをアナログ世代としているので、メルセデスならW124、W126、W201などがアナログ世代となる。燃料噴射装置にはKEジェトロニック式が使われていることが多く、コンピュータ制御がされているもののデジタル世代のような高度なものではなく極めてシンプルな機構だ。これらのモデルは30年選手のクルマも多いことから、各部の経年劣化もかなり進んでおり燃料系においてもどこかに不具合を抱えてエンジン不調となっているクルマが目立つ。KEジェトロニックは燃圧を正常に保つことが重要になるので、燃料系パーツにはとくに気を配る必要がある。また、フィーリングに大きな影響を与えるゴムブッシュやマウント類の劣化が進んでおり、異音や振動の原因になっていることも少なくない。エンジンの熱などによって、ラジエターのサブタンクなどの樹脂パーツが劣化して亀裂や割れが生じることもある。

 オイル漏れを起こしているクルマも非常に多い。にじみ程度ならデジタル世代でも発生しているが、ヘッドガスケット抜けによってオイルラインに冷却水が混入してしまうといった大がかりな修理に繋がるような事例が多発している。オイル漏れを放置した結果、症状がひどくなり大きなトラブルに繋がるというパターンだ。漏れたオイルがゴムブッシュに付着して寿命を縮めてしまうといった、二次災害を起こしていることもよくある。またマフラーから白煙が出ている場合、オイル下がりが起きている可能性が高い。エンジン内部のバルブステムシールの劣化が原因だ。こうしたエンジンヘッドを開けての整備が必要になっているのもアナログ世代にありがちなパターンである。

 その一方で構造がシンプルであるがゆえに、トラブルが起きてもすぐに対処できることもある。W123などでエンジンが突然止まってしまった場合、その原因のほとんどは燃料ポンプリレーかイグナイターの不良。燃料ポンプリレーは直結することで再始動できるし、イグナイターは予備パーツを積んでおけばレッカーを呼ばずともその場で交換修理ができる。W124も同様で燃料ポンプリレーの不良のほか、オーバーボルテージリレーの不良によるエンストなどが多いが、これも予備パーツを持っていれば恐れることはない。交換についても非常に簡単なので、出先でトラブルが起きてもすぐに対処できるのである。

 デジタル世代でエンジンが止まってしまうようなトラブルが発生した場合、基本的には何も手を出せない。部品の交換で直るものでも、コンピュータ診断機によるコーディング作業が必要になることが多いため、レッカーを待って修理工場に行くしかないのである。

 トラブルの頻度としては年式的な面でデジタル世代よりも不利な部分もあるが、あちこち壊れてどうしようもないというのは日頃のメンテナンスが不十分であることも考えられる。アナログ世代のメルセデスは消耗品を定期的に換えながら長く乗るという設計がなされている。事実、しっかりとメンテナンスされ、オーナーの愛情が注がれたクルマは驚くほどの良好なコンディションをキープしているのだ。ただお金をかけるというのではなく、信頼できるメカニックと相談しながら効率的にメンテナンスをすることでトラブルは予防できるのである。

 デジタル世代に多い電気的なトラブルは突発的に発生するためこれといった予防策がないのが難点だが、ユーザーの心がけによって、クルマの調子を大きく左右するのがアナログ世代のメルセデスなのである。

燃料系パーツの中でも重要なのがフューエルデスビ。基本的には丈夫なパーツだが、最近ではトラブルが起きるケースが増えている。分解整備はできない。

オイル漏れがひどいクルマが多いのがアナログ世代。エンジン内部の水路にスラッジなどが溜まると水温上昇の原因になる。

エンジンマウント

W124はオイル封入式のエンジンマウントだが、それ以前は普通のゴムマウントとなっている。劣化すると振動の原因に繋がるパーツだ。

燃料ポンプ

アナログ系メルセデスにとって重要になるのが燃料系パーツのメンテ。燃料ポンプやリレーなど、トータル的な整備が必要な時期。

オイル漏れ

各部からのオイル漏れがひどくなっている。ヘッドガスケットが抜けて、オイルラインに冷却水が混入すると修理には手間がかかる。

足回りパーツ全般

ボールジョイントのガタやブーツ切れに加えて、足回り全体のメンテナンスが必要になってきている。とくにリアサスに気を配りたい。

ATの変速不良

ATは消耗品。長く使えばいずれはオーバーホールが必要になる。作業はアナログ世代のメルセデスを得意とする工場に依頼するようにしよう。

エアコン

エンジン、ATに続く大物修理であるエアコン。ガスチャージだけでなく、コンプレッサーのオーバーホールなどシステム全体の整備が必要になっている。

イグナイター

突然エンジンが止まる原因として多いイグナイターは高価であることがネック。叩くと一時的に復活することもある。アナログらしい!?